FX取引においてよく使われる分析ツールに「フィボナッチエクスパンション(エキスパンション)」があります。
ここでは、このフィボナッチエクスパンションのロジックや使い方、取引ツールMT4/MT5での使い方などについてまとめました。

取引ツール上では「エキスパンション」と表記されていますが、「エクスパンション」と呼ばれる例が多いため当ページではこちらを採用します。
フィボナッチエクスパンションとはどんな手法?


フィボナッチエクスパンションとは、自然界にある黄金比率を元にFXトレードするときに使うツールです。
主に将来、価格がどこまで上がるのか(または下がるのか)を予測するときに利用されます。
チャート上に表示された波の中で、特定の起点と終点を結び、為替価格の38.2%・61.8%(など決まった割合に水平ラインを引いてくれるため、視認性が良くなります。
とはいえ、これだけではよくわからないと思います。
次から、1つ1つ順を追って解説していきます。
まずはフィボナッチリトレースメントを知ろう!


フィボナッチエクスパンション手法は、従来からよく利用されるフィボナッチリトレースメントを応用したものです。
リトレースメントがどれくらい戻ってくるのか?の予測に利用するのに対し、エクスパンションはどのあたりまで伸びるのか?を予測します。
フィボナッチエクスパンションを利用することで、トレンドが発生しているときの伸びを予測しやすくなるでしょう。
エントリーしてからどの価格まで保有できそうなのか?
そのシナリオを描くときに使えます。
そこで、まずは元となったフィボナッチリトレースメントとはどんなものなのか?について見ていきましょう。
フィボナッチリトレースメントとは?
フィボナッチリトレースメントは「フィボナッチ数列」から生まれたものです。
「フィボナッチ数列」とは、ある公式により物事の安定性を示す数字のこと。
自然界の数字が「0.618(61.8%)」に収束する法則(黄金比ともいわれる)から成り立っています。
ここまでの説明では頭に「?」が浮かんでいる方も多いのでは?
この0.618という数字は、古くから様々な場面で使用されてきました。
(38.2%と23.6%もよく使われます)
人間が心理的に安定していると感じられるバランス・割合を示している数字でもあります。
モナリザの絵やパルテノン神殿の構造も、この数値のバランスで表現・構成されているのは割と有名です。
この黄金比とも言われるフィボナッチ比率を、FXのトレードに応用しチャート上に描写してくれるのがフィボナッチリトレースメントです。
フィボナッチリトレースメントを使うときは、値動きを表示しているチャートの中で目立つ高値を1、目立つ安値をゼロと仮定します。
(逆も同様です)
そして、0.618(61.8%)と38.2%の位置にラインを引いて目安にしていきます。
取引ツールMT4でラインを引いた例(EURUSD日足チャート)


起点から61.8%戻ってきたライン(戻り高値という)近辺で反転しているのがわかりますね。
(実際利用するときはもっと早い段階でラインをひきます)
このように、高値と安値の間の0.618の割合のラインが売り買いの分解点と考えることで売買に利用できます。
一見こじつけのようにも感じられますが、実際にフィボナッチ比率であるこの0.618は、FXや株価、その他の様々な数字のバランスにおいて黄金比となる数値。
多くのトレーダーがこのラインを境に売り買いを決める傾向が見られます。
要するに、この黄金比自体の効果だけではなく、この法則を信じているFXトレーダーが多い=売買が発生するポイントとなりやすいわけですね。
そのため、この法則を信じる信じないはどちらでもよく、意識されているポイントだと受け止めてチャート予測のシナリオに取り入れることが大事です。
リトレースメントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
そして、このフィボナッチ数列の意味を拡張し実際のFX取引に応用できるようにしたものが「フィボナッチエクスパンション」です。
フィボナッチエクスパンションを使うときの基本ルール
フィボナッチエクスパンションは、3つの価格「起点の高値(安値)」「直近の安値(高値)」「押し安値(戻り高値)」を元に使うものです。
フィボナッチリトレースメントは、主に61.8%と38.2%のラインを重要視していましたが、フィボナッチエクスパンションではそれ以外の数字も使われています。
取引ツールMT4でラインを引いた例(USDJPYの日足チャート)


上画像のチャートは、UDJPYの日足チャートで上昇トレンドが発生している状態です。
そこで、どこまで伸びていくのか?を想定するため、エクスパンションツールをセットしてあります。
ザックリとですが、100%、161.8%の黄色ラインまで伸びるかもしれない、と予測できます。
フィボナッチエクスパンション手法のロジックは?


フィボナッチエクスパンションはフィボナッチの基本となる61.8%のラインのほか、いくつかのラインが設定されています。
エクスパンションでよく利用されている数字(割合)は次のとおりです。
- 0
- (23.6)
- 38.2
- (50.0)
- 61.8
- 100
- 161.8
など
()の数字はトレーダーによって利用する方としない方に分かれますが、どの数字もFXトレーダーが反応しやすいポイントです。
ほかに「78.6%」「127%」「261.8%」などを追加して利用するトレーダーもいます。
とはいえ、この中でも強く反応しやすいのは上でリストアップした数字です。
もちろん、この比率で絶対反応するではありません。
ですが、ロウソク足がこれらのラインに交わるタイミングで反発する、一旦突き抜けて戻ってきたときに反発する、などの動きを見せる可能性は高いです。
そして、これら比率のラインで売買するのが主なロジック(手法)です。
基本の0.618(61.8%)という数字だけを当てにしていては、トレードチャンスも少なくなってしまいます。
そのため、前述した0.618以外のフィボナッチ数列を設定することで、チャートの値動きを判断しやすくし、取引回数を増やせるメリットがあります。
フィボナッチエクスパンションの使い方
フィボナッチエクスパンションツールの引き方


フィボナッチエクスパンションツールをチャート上に描画すると、上画像のようになっています。
(黄色ラインはトレーダーの設定により異なる)
引き方は、「1」をチャート上の最高値(最安値)である起点にセット、「2」はその後流れが反転しているポイント最安値にセット、「3」は少し戻ってきたときの目立つ高値(安値)にセットしてください。
実際にチャートにエクスパンションツールをセットしたもので確認していきましょう。
EURUSD日足チャートでフィボナッチエクスパンションを引いたサンプル画像
- 月足チャートは下落トレンド
- 週足チャートは下落トレンド
- 日足チャートは直近最安値2か所(緑丸)を下に抜けたため下落トレンドに転じていると判断
- 下落方向にさらに伸びると考えてフィボナッチエクスパンションをセット


複数の要素から下落トレンドになっていることを確認し、どこまで伸びるかフィボナッチエクスパンションを使って予測するためにエクスパンションツールをセットした画像です。
あとは、終点から100%や161.8%の位置、それ以上まで伸びるのか、を予測します。
100%までは伸びるだろうと判断した場合、ショートエントリーして100%の位置近辺に指値(テイクプロフィット)を設定します。
強気に161.8%までは到達するだろうと判断したなら、その近辺の価格を設定します。
上の事例であれば、
- 月足・週足・日足がすべて下落傾向で方向が一致
- 2つの目立つ安値を下にブレイクして下落傾向が強い
- エクスパンションツールをセットした波がエリオット波動の第三波目であるため最も伸びやすい
と考えられることから100を超えてくる可能性は十分あるでしょう。
日足チャートのため、予想価格に到達するまでかなりかかりますが、指値と逆指値を設定しておくことで放置できるため問題ないでしょう。
このように、フィボナッチエクスパンションツールを使ってみてください。
なお、エクスパンションツールを使うときに注意したいポイントも紹介しておきます。
フィボナッチエクスパンションを使う時の注意点


- 正しい位置に引く
- 大きな波で捉える
- ヒゲ先がロウソク足本体のどちらを選ぶのか?はトレーダーしだい
- 加点要素として捉え妄信しない
- トレンドが発生している相場で使う
- ほかのFXトレーダーの動きを知る
正しい位置に引く
フィボナッチエクスパンションに限りませんが、チャート上では必ず正確な位置にセットしてください。
ロウソク足1本分でもズレていては正しい効果を期待できなくなってしまいます。
MT4/MT5のような取引ツールでエクスパンションのラインを引くとき、ロウソク足やヒゲの先端に近づけると勝手にくっついてくれます。
しっかり目的のポイントにセットできたか確認しましょう。
また、わかりやすい最安値と最高値を見つけてセットしていきましょう。
MT4/MT5では、エクスパンションをセットした時間足より短期の時間足に切り替えると、起点と終点がずれていることがあります。
正確にするためにも、短期足チャートでも確認し修正してみてください。
大きな波で捉える
チャートのロウソク足の波は、上下に動きながら右方向へ進んでいきます。
そこでザックリとした波でとらえてください。
FX初心者の方で慣れていない場合は、高値・安値の捉え方に役立つMT4に備わっているインジケータ「ZigZag」などを利用するとわかりやすいです。
ZigZagのセット例


これで最高値と最安値は簡単に見分けられるでしょう。
そして、より大きな波で捉えることをおすすめします。
FXでは時間足が大きいチャートから小さいチャートへ切り替えつつチェックし、方向感を揃えながらエントリーポイントを探すほうが正しくトレンドをとらえやすいです。
トレンドの逆らわずエントリーすることで、勝率も上がっていくはずです。
ヒゲ先がロウソク足本体のどちらを選ぶのか?はトレーダーしだい
エクスパンションツールをセットするとき、ロウソク足のヒゲ先か本体のどちらが良いのか迷う方もいることでしょう。
これに正解はありません。
編集部ではヒゲ先に引くようにしていますが、本体でも間違いではありません。
どうしても迷うなら、そこではエントリーしないことをおすすめします。
あいまいな要素がなくわかりやすいところだけでエントリーしていきましょう。
加点要素として捉え妄信しない
FX初心者の方ほどやりがちですが、フィボナッチエクスパンションを絶対的な指標として考えないでください。
61.8%のラインにタッチしそうだからそろそろショート(ロング)エントリーしておこう、という安易な判断はもってのほかです。
あくまでも動きを予測する時の「加点要素の1つ」として考えることをおすすめします。
目立つ最高値(最安値)に引いた水平ライン、最高値同士・最安値同士を結ぶトレンドライン、さまざまなインジケータなどを一緒に使っていきましょう。
あまり多すぎるのも問題ですが、それらの要素を複合的に見て、トレンドラインにタッチする&フィボナッチエクスパンションの61.8のラインにタッチする、など複数の加点要素が重なったときにエントリーする使い方をおすすめします。
このあたりは、自分ルールを決めておきましょう。
トレンドが発生している相場で使う
フィボナッチエクスパンションが使えるチャートは、上下に動きがはっきり出ているトレンド相場がおすすめです。
反対にレンジ相場という停滞しているチャートではあまり活用できないでしょう。
上下に大きく動いてくれなければ、黄金比の位置のラインに干渉してくれないため何もできません。
FXの為替市場は早朝はオーストラリア、日中は日本、夕方からはヨーロッパ、夜はアメリカ市場がオープンしています。
もっとも値動きが激しくなるのは、ヨーロッパ市場とアメリカ市場が重なる時間帯。
日本時間で21時頃からがもっともとトレンドが発生しやすいです。
とはいえ、為替レートは各国の重要な経済指標発表の影響も受けます。
とくに金利関係の発表で動くことが多いため、ニュースにも耳を傾けておきましょう。
自分で探すのが面倒なら、FXネタをツイート(ポスト)している方をフォローするなど人任せでもOKです。
ただし、予想は自分でやるようにしましょう。
他人の考えを鵜呑みにするのもリスクが高くなりますし、経験値が貯まりません。
メンタル面でも負けたときに人のせいにしがちです。
上で触れたように、プロトレーダーの意見でも強めの加点要素の1つとして考える程度にしておくことをおすすめします。
ほかのFXトレーダーの動きを知る
FXは勝つ人もいれば負ける人もいます。
両方いるから稼げるトレーダーがいるわけですね。
そして、稼ぐポイントはチャートの未来を予測する=ほかのトレーダーの考えを想定すること。
これが一番大事なポイントになるため、フィボナッチエクスパンションはそれを予測するための1つのツールでしかありません。
過去チャートを開いてフィボナッチエクスパンションのラインを引いてみると、それぞれのポイントでロウソク足が反応しているのを確認できます。
それだけ多くのトレーダーがフィボナッチエクスパンションを利用して取引してると言えるでしょう。
ここまでフィボナッチエクスパンションの使い方と注意点を見ていきました。
では、実際の取引ツールではどのように使えばいいのでしょうか。
そこで、FXで最も利用されている取引ツール「MT4(メタトレーダー4)」を例に、フィボナッチエクスパンションツールの使い方を紹介していきます。
MT4ではデフォルトでこの機能が搭載されているため簡単に使えます。
ここでの解説を参考にまずはチャートにセットしてみてください。
MT4/MT5でのフィボナッチエクスパンションツールの使い方・設定方法


【パソコン版MT4/MT5】フィボナッチエクスパンションの使い方
- MT4(MT5)を起動
- エクスパンションツールを描画したいチャートを開く
- メニューの「挿入」をクリック
- 挿入メニュー内の「フィボナッチ(F)」→「エキスパンション(E)」をクリック
- チャート上の起点でクリックし、次にセットするポイントまでドラッグ&ドロップ
- 終点をセットする
ここではMT4で見ていきますがMT5も似たようなものです。
この画像の通りに進めていきましょう。


パソコンでMT4(MT5)を起動したら「挿入」→「フィボナッチ」→「エキスパンション」の順にクリックしていけば引けます。
※MT4上では「エキスパンション」表記ですが当ページではネット上で主流の「エクスパンション」表記を採用
あとは3つの価格「起点となる高値(安値)」「直近の安値(高値)」の2つを結べば「押し安値(戻り高値)」の目安が表示されます。
【スマホアプリ版MT4/MT5】フィボナッチエクスパンションの使い方
- MT4(MT5)アプリを起動
- チャート画面を開く
- ページ上部のオブジェクトアイコンをタップ
- 「オブジェクト追加」をタップ
- 一覧から「フィボナッチエクスパンション」をタップ
スマホもMT4アプリの画像で解説していきますが、MT5も似たようなものです。


MT4アプリを起動→チャート画面を開く→▲●■が重なっているアイコンをタップ→オブジェクト追加をタップ→フィボナッチエクスパンションをタップでラインを引けます。
ラインを消すときは、オブジェクトページの右上にあるゴミ箱アイコンをタップしましょう。
このように、パソコン版・スマホ版のどちらのMT4/MT5でも標準搭載されているためすぐに使えます。
ただし自分で引くのはかなり面倒なんですよね…。
そこで、ズボラなトレーダーにとって便利なフィボナッチエクスパンションインジケータもチェックしておきましょう。
MT4/MT5用のフィボナッチエクスパンションインジケーター
より多くのトレーダーに利用されている「フィボナッチリトレースメント」ほどインジケーターの種類はありません。
また、MT4/MT5標準搭載のインジケーターもないため、有志が独自開発したものをダウンロードして使わせてもらうことになります。
自動でエクスパンションのラインを引くインジケーター
自動でラインを引いてくれるインジケーターには以下のものがあります。
- フィボナッチ自動描画インディケーター
ストレートなネーミングの自動描写インジケーターです。
自動で書いてくれるのはありがたいですね。
ただし、フィボナッチリトレースメント/エクスパンション/ファンの3種類を同時に描写します。
興味ある方は「フィボナッチ自動描画インディケータ」で検索すると一番上にでてくるはず。
そこからダウンロードしましょう。
自分でエクスパンションのラインを引く際の補助的インジケーター
自分でラインを引くタイプのインジケーターには次のものがあります。
- FiboQuick(製品版は有料)
自分で引くのは難しいと感じる方は、こういった補助的なツールを利用しましょう。
ただし、FiboQuickは有料版がメイン。
お金を出すほどフィボナッチエクスパンションを使うのか?というと疑問です。
ちなみに「PZ Fibonacci」という無料インジケーターもありますが、こちらは「フィボナッチ ”エクステンション”」のラインを引くもの。
フィボナッチにもいろいろあるため間違えないようにしましょう。
このように「フィボナッチエクスパンション」のインジケーターはほとんどありません。
個人的にはそこまで需要がない=利用するFXトレーダーが少ない=チャートの加点要素として弱い、と考えます。
そのため、記事冒頭で紹介した使うようであれば「フィボナッチリトレースメント」をおすすめします。
フィボナッチエクスパンションに関するQ&A
まとめ
FXチャート分析で使える「フィボナッチエクスパンション」について解説しました。
FXトレードする際には、様々な分析から自分なりにトレードのポイントを見極めることが大切です。
昔からフィボナッチ比率(黄金比)に基づくトレードは多くの場面で利用されています。
ただし、フィボナッチ比率を利用した分析ツールは複数あり、それらの中でもエクスパンションの利用度はそれほど高くないと感じます。
参考にするトレーダーが少ないほどチャート上での反応も少なくなるため、この要素だけで売り買いするのは非常に危険です。
加点要素の1つとして利用する程度にしておくことをおすすめします。