
・フラッシュクラッシュは普通の急落と何が違うの?
・FXでも起こる?
・発生したらロスカットや約定はどうなる?



フラッシュクラッシュは、価格が数秒~数分で急落し、その後短時間で反発する異常な値動きです。FX・株・暗号資産で起こり、注文が集中すると逆指値やロスカットが設定価格より不利な価格で約定することがあります。
- 【結論】数秒~数分で急落し短時間で反発する異常な値動き
- 【対処法】早朝・週明け・長期休暇前後はロットを落とすか取引を見送る
- 【注意点】逆指値を設定しても設定価格どおりに約定するとは限らない
- フラッシュクラッシュとは何か
- 普通の急落との違い
- フラッシュクラッシュが起こる主な原因
- FXで起きたときに何が危険なのか
- 初心者が取るべき対策
- フラッシュクラッシュを前提にした資金管理の考え方
FXでは、ときどき数秒~数分で価格が大きく崩れ、その直後に戻るフラッシュクラッシュが発生します。
通常の相場急落と違い、流動性が急激に薄くなることで価格が飛び、注文が想定外の価格で約定する点が大きなリスクです。
ポジション量が大きいと、短時間で口座資金の大半を失う可能性があります。国内FXでは相場状況によって追証(借金請求)が発生することもあり、ゼロカットを採用する海外FXでも利用規約や適用条件の確認が必要です。
そこでここでは、フラッシュクラッシュの定義、原因、起こりやすい時間帯と通貨ペア、過去の代表例、被害を抑える対策を解説します。
フラッシュクラッシュとはどんなもの?


フラッシュクラッシュとは、価格が数秒~数分で急落し、その後短時間で急反発する異常な値動きです。
単に大きく下落しただけではなく、短時間で価格が戻る点が通常の暴落との違いです。急騰方向の異常な値動きは「フラッシュスパイク」と呼ばれることもあります。
価格が飛ぶとスプレッドが急拡大し、逆指値やロスカットが指定価格を越えて約定するスリッページも発生します。そのため、数分後に価格が戻っても、すでにポジションが強制決済されていることがあります。
ロスカットとはFX業者側で顧客資金を守るために用意している強制決済の仕組み。
ただし、ロスカットは一定の証拠金維持率を下回ったときに執行される仕組みであり、損失額や約定価格を保証するものではありません。
ゼロカットを採用する海外FX業者では、適用条件を満たせばマイナス残高がリセットされます。とはいえ、口座資金を失うリスクは残るため、ゼロカットを理由にロットを上げるのは禁物です。
FX・CFDで起きたフラッシュクラッシュと急変動の事例


- 2015年1月15日 スイスフランが急騰し、EUR/CHFが急落
- 2016年10月7日 英ポンド/米ドル(GBPUSD)でポンドが急落
- 2019年1月3日 ドル円(USDJPY)と豪ドル/米ドル(AUDUSD)でドルが急落
- 2020年3月9日 ドル円(USDJPY)が急落
- 2023年12月8日 ビットコイン/米ドル(BTCUSD)が短時間で急落
- 2023年12月11日 ビットコイン/米ドル(BTCUSD)が短時間で急落
2015年1月15日 スイスフランが急騰しEUR/CHFが急落(日足チャート)


2015年1月15日、スイス国立銀行(SNB)がEUR/CHFの下限1.20を維持する政策を突然終了し、スイスフランが急騰しました。
その結果、EUR/CHFではユーロ売り・スイスフラン買いが殺到し、短時間で大幅に下落しました。
政策変更という明確な材料による急変動のため、厳密には典型的なフラッシュクラッシュと区別されることもあります。ただし、流動性の消失と価格の飛びによって、多くのFX業者やトレーダーに大きな損失が出た代表的な事例です。
EUR/CHFは短時間で1,000pipsを超える値幅を記録し、CHFを含む複数の通貨ペアにも急変が波及しました。逆指値が大きく滑り、一部のFX業者が経営破綻するほど市場への影響が大きかった事例です。
2016年10月7日 英ポンド/米ドルでポンドが急落(日足チャート)


2016年10月7日の日本時間の午前8時頃にGBP(英ポンド)でフラッシュクラッシュが発生しています。
このとき、GBPUSD(英ポンド/米ドル)はわずか数分の間に約6%下落しました。
外国の通貨同士だとわかりにくいんですが、ドル円で考えた場合1ドル=100円から6%下落したら6円(600pips)ですからね。
それくらい大きな値動きが発生していたわけです。
取引量の多い英ポンドでも、流動性が薄い時間帯には大きな価格の飛びが起こることを示した事例です。
2019年1月3日 ドル円と豪ドル米ドルでドルが急落(日足チャート)




2019年1月3日にこの現象が起こりました。
当時、108.9円をつけていたドルが104.8円になっていることを年末年始の休暇中に知って驚いた方も多かったでしょう。
一瞬で400pips以上もの値動きが発生したわけですね。
(ドル円の1pips=0.01円)
さらに、オーストラリアドルと米ドルの通貨ぺア(AUDUSD)も500pipsほど下落しました。
直前にはAppleが中国市場の減速などを理由に業績見通しを下方修正し、投資家のリスク回避姿勢が強まっていました。ただし、急落を拡大させた主因は、年始の薄い流動性の中で注文と損切りが集中したことです。
とくにAUD(豪ドル)は中国への依存度が高いため影響が強く出たようです。
日本時間の早朝にドル円や豪ドルを保有していたトレーダーは、急激なスプレッド拡大やスリッページによって想定以上の損失を受ける可能性がありました。EAも相場急変時に停止するとは限らないため、年末年始に稼働させる場合はロットと最大損失を事前に制限しておく必要があります。
2020年3月9日 ドル円でドルが急落(日足チャート)


2020年3月9日には、新型コロナウイルスへの不安と原油価格の急落を背景に、ドル円が短時間で大きく下落しました。
上画像のチャートではあまり大きな変動には見えませんが、あくまでも短時間で急変しているかどうか?です。
このときは短時間に1ドル104円から101円台まで急落しました。
ただし、明確な材料による相場全体の急落であり、短時間で元の水準へ戻る典型的なフラッシュクラッシュとは性質が異なります。この記事では、急変時のリスクを確認する参考事例として掲載しています。
2023年12月8日 BTCUSDが急落(1時間足チャート)


2023年の後半はビットコイン価格が急上昇しました。
そんな年末の12月8日(日本時間では9日の早朝)、ビットコイン米ドル(BTCUSD)が数分の間に7%以上急落しました。
その後すぐに価格は戻ったものの、これだけの変動があれば、ロスカットになってしまった方もいることでしょう。
数年前までは仮想通貨銘柄を扱っていない業者も多かったのですが、現在はほぼ対応しています。
暗号資産CFDは週末も取引できる一方、時間帯によって流動性が低下します。高いレバレッジで保有していると、短時間の下落と反発だけでもロスカットされるため注意が必要です。
2023年12月11日 BTCUSDが急落(1時間足チャート)


2023年12月8日に続いて11日の夕方頃にも、ビットコイン米ドル(BTCUSD)が数分の間に7%以上急落しています。
こちらは半値ほど戻したものの、その後は8日のような全戻しにはなりませんでした。
短期間で2度もフラッシュクラッシュが起こるケースは見たことがありません。仮想通貨はまだまだ相場の安定性が低い銘柄と言えますね。直近8年だけでも4件のフラッシュクラッシュが発生しています。単純平均すると2年の1回ペースです。
ちなみに、たまたまだとは思いますが、2015・2016⇒2019・2020⇒2023・????という規則性のある間隔で起こっていました。そのため、2024年に起こるかと思いましたが起こりませんでした。
(ただし、2024年8月5日、日経平均株価が急変動あり)
では、このようなフラッシュクラッシュはどうして起こるのでしょうか。
その原因を見ていきましょう。
フラッシュクラッシュが起こる原因は?


フラッシュクラッシュは、流動性の急減、大口注文、損切り注文、アルゴリズム取引が連鎖して発生・拡大します。
- 市場参加者が少ない時期に起こりやすい
- 大量・高額な損切りが多発した
- アルゴリズム取引が値動きを加速させる
市場参加者が少ない時期に起こりやすい


トレーダーの参加数が少ない時期・時間帯は危険度が高まります。
上で紹介したドル円のフラッシュクラッシュ事例が発生したのは1月3日のこと。完全に正月明けですので、年末年始を跨いでトレードしている方が少ない状況でした。
東京市場はお正月休みのため閉場、ニューヨーク市場は取引時間が終わっていました。オーストラリア・ニュージーランドのオセアニア市場はオープンしていましたが、これら市場は普段から参加者が少なめです。
それが正月明けでさらに過疎状態になっているシチュエーションですね。
そんな市場では、大口投資家が大きな金額で売り買いすれば一気に急騰・急落します。
そして、2019年1月3日の午前7時過ぎ、ドル円は108円を割り込んで一気に104円台後半へと突入していきました。
多くのトレーダーたちにとって想定外だったでしょう。正月早々に泣く泣く現実を受け入れた方も多かったのでは?と思われます。
年末は遅くともクリスマス前くらいまでに全ポジションの精算をおすすめします。
大量・高額な損切りが多発した
フラッシュクラッシュが起こる要因として、損切りが多発した可能性も挙げられます。
急変動によって強制決済(ロスカット)されてしまったこともその要因でしょう。
損切りラインをあらかじめ指定しておく逆指値注文(ストップロス)をしているトレーダーも多いです。
逆指値の設定は目立つ価格帯に集中しやすいため、たとえば買い注文が損切りやロスカットで一気に決済されてしまえば売り方向への動きが加速します。
つまり、参加するトレーダーが少ない状況の中で大きな売りが起こり、相場が下がったことによって損切りが多発、それがさらなる相場の下落を招く負の連鎖が起こったわけですね。
アルゴリズム取引が値動きを加速させる


機関投資家や高速取引業者は、一定の条件を満たすと自動で注文を出すアルゴリズムを利用しています。価格の下落を検知した複数のプログラムが同時に売却したり、流動性供給者が注文を引き上げたりすると、短時間で売りが連鎖します。
原因を単純に「AIの暴走」とするのではなく、自動注文と流動性低下が重なって値動きを増幅させる仕組みと考えるのが正確です。
フラッシュクラッシュが起こるハッキリした原因はわかりませんが、ここまでに紹介したような事象を定期的に見かけます。
よって、トレードするときはこういった相場の急変にも注意を払っておく必要があります。
備えあれば憂いなしといったことわざがあるように、しっかりと備えておきましょう。
基本対策は、逆指値を設定したうえでロットを抑え、取引に使わない資金を取引口座へ置きすぎないことです。なお、逆指値は損失を限定するために有効ですが、相場が飛んだ場合の約定価格までは保証されません。



私も年末年始はEAの稼働を止め、裁量取引のロットも落とします。利益を取りに行くより、流動性が戻るまで待つ場面です。
フラッシュクラッシュが起こりやすい時間帯は?


取引量が少ない時間帯はとくに危険です。
とくに長期休暇明けは要注意ですね。
上で紹介したフラッシュクラッシュの事例では、早朝のアメリカ市場がクローズしオセアニア市場オープンしたタイミングが多いです。
また、正月明けのように長期休暇明けのタイミングも要注意です。
ゴールデンウィークなどは日本固有の長期休暇のため、フラッシュクラッシュが起こるほどの影響力は低め。
ですが、年末年始や8月のバカンスの時期(海外トレーダーが休むシーズン)などは、FXトレード自体をしないほうが安全でしょう。
フラッシュクラッシュが起こりやすい通貨ペアは?


FXの為替相場が動くのは世界中で売買されているから。
フラッシュクラッシュは、売買注文を受け止める流動性が不足したときに発生しやすくなります。
というわけで、市場参加者が少ない=取引量が少ない通貨ペアは、フラッシュクラッシュが起こりやすい環境が整っています。
取引量が少ない通貨ペアでは注文板が薄くなり、大口注文や損切りの集中によって次に約定できる価格まで大きく飛ぶことがあります。
FXトレードで扱う通貨ペアには、大きく分けてメジャー通貨とマイナー通貨にわかれます。
マイナー通貨は、よりフラッシュクラッシュの危険性が高いと言えるでしょう。そのため、FX初心者はマイナー通貨に手を出さないことをおすすめします。売買するとしても知識を身につけてからがいいですね。
なお、「メジャー通貨」「マイナー通貨」に統一された公式分類はありません。この記事では、世界的な取引量と流動性を基準に区分しています。
メジャー通貨の種類
- USD(アメリカドル)
- EUR(ユーロ)
- JPY(日本円)
- GBP(イギリスポンド)
- CHF(スイスフラン)
- AUD(オーストラリアドル)
- CAD(カナダドル)
など
これら同士の通貨ペアは、多くの業者でメジャー扱いです。
上で紹介したフラッシュクラッシュ事例にUSD/EUR/CHF/JPY/AUDが含まれていることからもわかるように、メジャー通貨でも絶対安全ではありません。
ですが、これら通貨ペアは売買量が多く変動が穏やかな傾向です。
(GBPはボラティリティが高いため除外)
早朝や長期休暇明けなどのタイミングを外せば、フラッシュクラッシュ被害にあう可能性は減らせるでしょう。
マイナー通貨の種類
- TRY(トルコリラ)
- ZAR(南アフリカランド)
- MXN(メキシコペソ)
- CNY(中国人民元)
- HKD(香港ドル)
- SGD(シンガポールドル)
など
これらの通貨ペアは取引量がメジャー通貨に比べると少なめです。
その上で市場参加者が少ない時間帯にトレードしてしまうと、フラッシュクラッシュ被害にあう可能性も高くなるでしょう。
トルコリラや南アフリカランドでは、通貨ペアと売買方向によってプラススワップを受け取れる場合があります。
ただし、高金利通貨はスワップ以上の為替差損が出ることも珍しくありません。長期保有する場合もロットを抑え、損切り条件を先に決めておきましょう。
FXでフラッシュクラッシュの被害を避けるには?


フラッシュクラッシュがいつ起こるのか?は誰にもわかりません。
よって遭遇してしまう可能性をゼロにはできませんが、避けるための有効手段はあります。
ここまでに紹介してきた内容を総合して、できる対策を紹介します。
主なフラッシュクラッシュの予防・対策
- 長期休暇前に全ポジションを決済しておく
- エントリー時に逆指値を入れておく
- 重要指標発表前はポジション量を減らす
- 取引量の少なすぎる通貨ペアは避ける
- 週末をまたぐポジションを減らす
- 注文ロット数を抑える
長期休暇前に全ポジションを決済しておく
長期休暇明けの早朝はフラッシュクラッシュ発生確率の高い時間帯です。
市場が閉まっている間は決済できず、週明けに価格が飛ぶと逆指値も指定価格では約定しません。
年末年始など流動性が大きく低下する時期は、休場前に決済するか、少なくとも保有ロットを大幅に落としておきましょう。
なお、海外FXを利用しこういうタイミングを狙って両建て&ゼロカットを悪用するトレーダーもいますが、利用規約で禁止されています。
バレればアカウント凍結になる可能性大ですのでやらないでくださいね。
エントリー時に逆指値を入れておく
注文するときには必ず逆指値(損切り価格の設定)を済ませておきましょう。
これはフラッシュクラッシュ対策に関わらず、毎回設定しておくことをおすすめします。
ワンクリック注文などで注文時に逆指値を入れられないケースもありますが、すぐに注文変更から逆指値を設定しておきましょう。
このひと手間を忘れる・面倒くさがると痛い目にあいやすくなります。
重要指標発表前はポジション量を減らす
上のフラッシュクラッシュ事例で紹介したアップルの発表のように、予期しないタイミングのものはどうにもなりません。
一方、雇用統計や消費者物価指数、政策金利などの重要な経済指標は発表時刻が決まっています。
市場予想と結果が大きく離れると、価格急変・スプレッド拡大・スリッページが同時に発生します。
重要指標をまたいで保有する明確な戦略がなければ、発表前に決済するかロットを減らしておきましょう。
取引量の少なすぎる通貨ペアは避ける
スワップ狙いなど目的を持って保有している方は良いのですが、FX初心者の方がトルコリラや南アフリカランドなどのマイナー通貨でトレードするのはおすすめしません。
ちょっとした大口の注文が入れば簡単に大きな動きを見せてくるため、フラッシュクラッシュのリスクが高いです。
週末をまたぐポジションを減らす
週末をまたいで保有しなければ、休場中のニュースで週明け価格が飛ぶ窓開きリスクを避けられます。
ただし、フラッシュクラッシュは平日の取引中にも起こります。短期売買なら安全という意味ではなく、保有時間を短くすることで遭遇する機会を減らす対策です。
スイングトレードで週末をまたぐ場合は、逆指値だけに頼らず、急変しても耐えられるロットに抑えてください。



逆指値を入れたから安心ではありません。週末や年末年始をまたぐときほどロットを落とし、価格が飛んでも口座を守れる状態にしておきましょう。
注文ロット数を抑える
最も効果が大きい対策は、想定外の値幅が出ても口座資金を全損しないロットに抑えることです。
スイングトレードやポジショントレードをする方は、通常の損切り幅だけでなく、想定を超える価格の飛びも考慮して注文ロット数を決めましょう。
FXのフラッシュクラッシュに関するよくある質問
まとめ
FXトレードにおける災害ともいえるフラッシュクラッシュについて紹介しました。
フラッシュクラッシュは完全には予測できませんが、流動性が薄い時間帯を避け、ロットを抑え、逆指値を設定することで被害を小さくできます。
そうならないためにも、
- トレーダーの参加者が少ない時期はトレードしない
- 自動売買ツールなら停止しておく
- こまめに別口座に資金移動しておく
といった予防・対策が大事です。
特に年末年始、週明け早朝、重要指標の発表前後は流動性低下や価格急変に注意が必要です。
私なら、相場が薄い時期は利益を狙うよりもポジションを持たない選択を優先します。1回の急変で、それまで積み上げた利益を失わないためです。





